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執筆者の写真フェアトレードサークル 札幌学院大学

「さっぽろ ゆめ結晶」プロジェクトメンバー取材企画 第6弾

更新日:2022年1月19日


取材日:2020年8月21日

(※時間の経過の関係で現在と異なる内容がある場合がございます。)


第6回目となる今回は、ベトナムエシカルブランド「JV STYLE(ジェイブイスタイル)」を運営する山畠様にお話を伺いました。

今まで同様、事前に用意した質問にお答えいただき、その後、質疑応答や意見交流を行いました。今回はその質問と質疑応答の中から一部抜粋して記事を記しましたので、ぜひご覧ください。



「一人一人の価値と向き合う難しさ」

Q1.事業でフェアトレード推進活動を行う上での課題や問題点はありますか。


山畠様:支援団体で決めた公正価格であるから問題ないと思いますが、小さい生産者グループと直接やりとりするようなものもありますので、そういった時に適正価格を考えるのが結構大変です。人によっては少しでも高く売りたい、外国人だから高く買ってくれるはずだという感情でくる方もいますし、普通通り「自分たちの売ってる値段はこれです」「これだけ欲しいです」と言ってくる人もいます。自分がこれねって言った値段がすごく安い時もあります。すごく高い物が出てくる時は、気持ちはフェアトレードですから値下げ交渉というのは基本したくないです。したくないけれど、どういう理由でそうなっているのかという理由を聞き、その上で折り合いをつけながら「それならこのくらいではないか」とやっていきます。

逆に「安いな」「その値段でいいの?」というのがすごく難しいと思っています。「もっと取っていいよ」と言うべきなのか、本人がそれでいいと思ってるから「その値段でいいんじゃないだろうか」というのが両方ありますよね。その値段をどうするかは私の中でまだ決まってないですが、1つは本人にとっての価値ってすごく大事な気がしています。これでいいと思ってるのに、もっともっと高くするということはお金に対する変な意識をつけてしまうことになるんじゃないかといろんなことを考えてしまうので、ケースバイケースで悩みながらやっています。



Q2.我々のプロジェクトに賛同いただいた理由をお聞かせください。


山畠様:私も江別っ子で大麻育ちですので、地元でそういったプロジェクトをやるというのは頑張ってほしいと思っていますし、自分もこういったフェアトレード産品と地域を結びつけたものをやりたいと思っていますので、それ自体に賛同しているという部分で応援しております。

Q3.「さっぽろ ゆめ結晶」に期待していることがあれば、お聞かせください。


山畠様:地域を代表する商品になっていくといいと思います 。



※以下からは、学生からの質疑応答と意見交流の様子を抜粋してお届けします!



「苦労をしてでも、言語を超えた人とのコミュニケーションは楽しい。」

学生:コロナの状況になって、生産者とのやり取りがやりやすくなったことややりにくくなったことなど変化はありましたか?

山畠様:以前、時々会ったりできていたものが会えなくなりましたが、SNS、オンラインで連携は取り合っているので何とかやっているという感じです。

支援団体とやり取りをして支援団体が生産者とやり取りをするものは、支援団体を経由しています。支援団体は支援が終わったので本当は自立させたいけれども、いきなり手放すとまだ出来ないので販売のところを落ち着くまで手伝うというような感じです。いずれ流れができると直接支援団体が抜けて生産者と直接やるようになるかもしれないですけれど、今のところ3つで、お茶と農村開発支援団体というところのWPOの団体が扱っている農産品とバスケットとは団体を経由して、英語でお話ししてます。

あとは、障害者支援団体のような団体もあって、そこは支援団体が直接障害者の就労を雇用していて、英語でやり取りしていましたね。ややこしいところは日本語のできるベトナムの方に頼んで通訳をしてもらってやりとりをしています。もう1つ障害者の団体がありますが、そこも同じような感じです。

あと、農村の直接やり取りをしてる方々は、本当に作り手と直接お話ししてるんですけどFacebookのmessengerなどを使っています。英語はできないのでたまに日本語通訳を頼むときもありますが、google翻訳を使ってベトナム語を翻訳したり、できるだけわかりやすい日本語の文章を製作したりしてやり取りをしています。基本画像とか絵を書いて解説するような形で言葉がいらないような〇とか✕とか何センチとかを示してやり取りをしているところもあります。だいたい三者三様そんな感じですね。



学生:難しそうですね。


山畠様:いやいや、楽しいですよ。ものを作るのはたぶん楽しいと思いますし、人とのコミュニケーションというのも、苦労はするけども通じたら楽しいですよね。そんなに英語と言っても私も英語力が高いわけではなく、google翻訳を使いながら文章を作る時も多々ありますけど、それでも何とかなっています。ベトナムの人は割とフレンドリーで、通じなくても喋りまくるんですよね。現地で直接滞在していると、分かんないからって言ってもとにかくコミュニケーションするというタイプで、言ってることがわかろうがわかるまいがお構いなし、そういう人同士の付き合いみたいのがあるので、通じる通じないをあまり気にせずにコミュニケーションをとることができます。言語が下手だと馬鹿にされると思いがちですが、東南アジアの人たちはほとんどないですね。特に親日国ではとてもフレンドリーです。比較的とっても素朴で親切で、コミュニケーションが気楽にとれます。

学生:自分たちもゆめ結晶の生産者とコンタクト取りたいと思っていて、言語を気にし過ぎてしまったり、日本人だからか思いすぎたりしていたので、もっと積極的になろうと思います。


「札幌のようなお店が並ぶ都市から3時間行くと電気がないような場所もある。現地の様子は行ってみないとわからないですね。」

先生:将来渡航ができるようになったらそこにゆめ結晶を届けて、実際に生産者の生活を学んでもらいたいと思ってます。やっぱり現地の人に会うのと会わないのとでは大きく違いますよね。


山畠様:そうですね。でも生産者も比較的都会の生活してる人もいれば、これはすごいっていう想像を絶するような生活をしている人、電気とか水、水道がない中での生活をしてる人も居るし、比較的インターネットも電気も水道もあるところの人もいると思うんです。生活の様子は行ってみないと分からないですね。先日、3時間ほどの東ティモールの生産者の旅のようなオンラインツアーがあり、現地の良さが分かってとっても素敵だと思いました。

街の様子はそれなりの規模の都市で、札幌のカフェのようなところでコーヒー豆を出していました。だけど、生産者のところまで山道を3時間行くとだいぶ違う。最近支援があって電気を引いたそうです。実際に現地に行けなくても、オンラインツアーのように何か手立てをして様子を知るのはすごくいいことだと思います。

先生:今はオンラインだからこそ、現地に行かなくてもその情報を得ることができる時代ですからね。まめにZoomとかでつないでコミュニケーションがとれると、ある程度情報を得られるかもしれないですけどね。

「それぞれの価値を肯定し、ストレスなく繋がれるようなやり取りを。」

先生:個人の方とか生産者と直接繋がって取引をされるうえで、日本の価値観とその国の価値観の違いというか、日本人のその品質を最高のものを求める国民性とそうではない人たちの違いなど、指導がすごく大変だと思います


山畠様:はい。力強く言いますね



先生:どんな形で現地の人に理解していただくんですか?


山畠様:私も最初に凄く学んだといいますか「あ、そっか!」と思ったのは、こちらの日本基準をあまりにもやりすぎると、まず引いてしまって、もうやらない、やりたくないとなりますので、そこを押し付けすぎるといけないことですね。日本の基準に引き上げるキャパシティビルディングが本当にいいことなのか、一歩考えなきゃいけない。日本はダメだよ、ほかの外国はこれで出してるって言われる時もありますし、だから日本クオリティなんです。やり取りも要求が非常に細かい、例えばお客さんからの注文を受けて注文生産をするような場合は、お客さんからの質問や要求が凄く多いんです。だからほどほどに緩和していかないと、聞いているうちに嫌になってやる気をなくすんですね。

これはモノ作りだけでなく、ITの人材育成のときにもありました。日本の細かさに合う人と合わない人がいる。ベトナム人のITエンジニアの中でも欧米型と日本型と二手に分かれるという話もあります。生産者もそういった綺麗なものを完璧に作ることに意欲を持てる生産者と、「これでいい」「なんでだめなの」っていうタイプと両方いるんだと思います。だから、その両方を肯定していいと思いますので、会ってストレスのない人と上手く繋がって続いていくんじゃないかなと思って、そこに持ってくるまでの間というのは、なるべくやりすぎないように加減しながらやり取りするというのはあります。



「何が生産者にとっての本当の幸せなのか、大事なところは忘れないでほしい。」

先生:先程すごく印象に残った山畠さんのコメントが、日本人にとっての適正な価格を提示するのが現地の人にとって良いのか、それとも生産者が良いと提示する価格を受け入れるのが良いのか、ジレンマがあるということです。物価の違いも明らかにありますから、日本にとってみては破格でも彼らがこの価格でちゃんと生活ができて幸せで、普通の生活が出来るのであればそれでもいいのかなと思います。

山畠様:私も最初、低所得者の月の収入は何千円とか「それでどうやって生きてくんだろう」って思ったんですが、現地に行ってみると農業が8割ぐらいで、自給自足のような農業、売るための農業と言うよりは自分達の生活の為に野菜を作ったり、米を作ったり、動物を飼育して、多くできものを市場へ持って行って売る。それで現金収入を得て、必要な調味料買ったり、服を買ったりする。あとは教育費や医療にお金がかかるけれど、そんな生活パターンの人が多いので、お金はあまり要らないんだなという、なくても幸せっていうのは正直思いました。先進国の中では色々な話がありますが、彼らのゆったりした生活の中では貧しいけれど幸せに見えました。でも都市部で話を聞くと「成功者になりたいです」って言うんです。努力をしてすごく頑張るはすごくいいことだと思うのですが、成功者になりたいということは、ある意味お金に縛られに行くわけで、そことそういうことを気にせず貧しいけど農村で頑張って生活しているのと、ちょっと悩みますね。頑張るところは応援するんですけれども、大事なところは忘れないでほしい。



「生産者にも消費者にも喜ばれるものを。」

先生:今のビジネスをされてて、1番やりがいに感じていることってどんなことですか?


山畠様:どっちの人にも喜ばれる結果になるというのがやり甲斐。いいものに出会ったり、いい技術に現地で出会ったりできることが素直に凄く感じて、注文するとやっぱり喜んでもらえる。地方、農村に直接行くとすごく歓迎される。そういう人たちの気持ちにできるだけ報いたいという気持ちになる。日本でそれを持ってきた時にどうなるか、やっぱり買った人も幸せになってほしいですから、どうしたら両方いいものになるか。日本のセンスに合わないものもあったりするので苦労しますけど、その辺を日本でも喜ばれるものができるといいなと。伝統品としての価値が好きな人もいますが、全般的に生活のライフスタイルにマッチするものでないとなかなか受け入れづらい部分。そういったものが無難にできるといいと思います。

「1年間手間暇かけて織り上げた生地、皆さんだったらいくらがちょうどいいと思いますか?」

生徒:価格のところで、フェアトレードが高いっていうイメージ、それは他の商品が安すぎるのか、フェアトレードの価格は高いというよりは本来の値段で、フェアトレードじゃ無い商品が安いっていうところがやっぱり事実なんですか?


山畠様:モノによると思いますが、大きな流通生産の流れでいうと、いくらで作ってくださいみたいなのを言う、その値段を生産する人間に押し付けられると思うので、売る側、買う側の値段感覚で言った場合は、フェアトレードではない商品が安いと思います。

例えばシルクとか綿とか1年かけて自分たちで栽培して糸にして織った生地とか、草木染めして綺麗に色を付けて織り上げた生地、1m60㎝×1mくらいの生地。いくらだったらいいと思います?そのコットンを栽培、自分たちで畑で半年かけて綿を作って収穫して、綿の塊ができて、それを紡いで糸にして、染めて、機織り機で織って生地ができます、一年かけて。私がこれは安すぎると思ったのは400円ぐらいです。それは安くないか?その経緯を考えると私としては安すぎないかと思うんですけど、本人がそれこそ「400円」って言ったら、じゃあ400円でいただこうかなと思う悩みますね。感覚的にいくら物価が安いとはいえ、1年かけてそこまで手間暇かけて作ったものをその値段でいいのかなって。それが先ほどすごく悩んだ例の1つです。たくさん作る、それが文化で本当に暇さえあれば手作業でやったりとか、何かしながらおしゃべりしたりとか、そういう時間でも兎に角作って、それで農作業の方はみたいな、そういうことでやっていってるので、普通の基準で考えてはいけない感じがします。その労働時間は何時間だから、最低賃金はいくらだからとか、そういうものをはめてはいけないという感覚があります。 1年でどのぐらいできるかわからないですが、たぶん副収入、いろんな収入で、自給自足の傍らとして考えた時に彼等にとってはそれでいいんだと。400円あればいろんなものが買えます。


学生:それを含めて数字だけを見るのではなくて、実際の現地の状況とかを見る重要性はすごいと感じます。自分も400円安すぎる、1年間でそんなだって、考えられない。

学生:どうしてもフェアトレードの表面的に最低賃金という言葉を使って、そこだけじゃない広め方、もっと暮らしにフォーカスしてもいいんじゃないかって思います。自由な生き方のようなものを。日本人にとってもそれを伝えることが大事だと思います。


学生の感想

三上:今回山畠さんからお話を伺ってお金の価値を深く考える機会になりました。フェアトレードについての知識があると、低い価格で取引されているものを見ると本当にそれでいいのかと考えてしまいがちですが、生産者から見るとそれが正当な価格なこともあるのだと感じました。どうしても気づかないうちに日本人の物価の感覚で捉えてしまいますが、必ずしも金額が高ければその分人は助かるというわけではないことを心に留めておきたいです。

また改めて今自分が交流している世界の狭さを実感しました。世界にはまだまだ自分と異なる価値観や暮らしをしている人たちがいて、いろんな人たちと交流を持ちながら生きる人生は豊かなものになるだろうと感じました。フェアトレードはそんな自分とは全く異なるところで生きている人と人を繋げることのできるものです。こんなご時世なので広い世界と関わるというのは難しいかもしれませんが、フェアトレードを通じて繋がることのできたこの機会を逃さずに、さらに色々な価値観を持った人々と触れ合いながら刺激を受けて生きてきたいです。



 山畠様、取材を受けていただきありがとうございました。今後もよろしくお願いいたします!



※時間の経過の関係で現在と異なる内容がある場合がございます。ご了承ください。

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