取材日:2020年8月20日
(※時間の経過の関係で現在と異なる内容がある場合がございます。)
第5回目となる今回お話を伺うのは、北海道よろず支援拠点の中野貴英様、山本美紀様です。まず、事前に用意した質問にお答えいただき、その後、質疑応答や意見交流を行いました。その記録を以下に記しますので、ぜひご覧ください。
「我々が何気なくプラスチックを消費してゴミにしてしまっている中でも地球規模の問題に繋がってしまっている。」
Q1.世の中で問題だと感じていることを教えてください。
山本様:まずなにより、コロナウイルスによる感染拡大とそれに伴う経済の冷え込みです。北海道よろず支援拠点では、小規模事業者や中小企業の事業者の経営に関する相談窓口を行っています。特にこの影響を受けているのが飲食店・旅行業の方で、売り上げの減少と資金繰りの相談を多くいただいています。それに寄り添い、解決策を一緒に模索するような支援を日々行っています。さらに皆さんが身近に感じる世の中の問題は、環境問題であると感じています。例えば、地球温暖化です。北海道でもエアコンが必要となってきたり異常気象であったりと、この先10年20年後どうなっていくのだろうかというのが心配事ではあります。同様に、海洋プラスチックの問題。最近テレビでも取り上げられている問題ですが、知られていない事実もあります。それは、日本のプラスチックゴミを一番送りつけてしまっている行き先が処理の体制が整っていない途上国であるということです。我々が何気なくプラスチックを消費してゴミにしてしまっている中でも地球規模の問題に繋がってしまっているのだと感慨深い問題であると思っています。世の中の問題というと、際限がなく国際的なものだけでなく日本国内でもあらゆるところにあると思っていて、個人的な経験の話になるのですが、5年間アジアの最貧国と言われているバングラデシュに駐在したことがあって、そこでは政府からの援助を受けていたり、国際機関やJICA・NGOなどの援助機関が集まっていました。バングラデシュで2006年にノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌス博士は、貧困層の方に無担保・無利子で少額の融資をするグラミン銀行の創設者です。ユヌス博士によって、銀行だけではなくソーシャルビジネスという形でその国の中での社会問題・課題もビジネスの力で解決しようという動きが活発化しました。そのソーシャルビジネスやバングラデシュの社会問題などを勉強しにくる日本人が多くいたのですが、彼らにユヌス博士は「日本人がソーシャルビジネスに関心を持ってここに来てくれるのは素晴らしいことだが、なぜ日本人は日本国内で起こっている問題にもっと目を向けないのですか?」と言っていたのが忘れられません。もっと日本国内でできる社会課題の解決の仕方があるのではと言われて、国際協力を地球規模の課題として考えていくこともすごく大事ですが、同時にその関心を持つことによって日本国内のソーシャルビジネスや社会課題の解決をどう支援していけるかというところが今の創業支援や事業者の支援に繋がっていて、日々日本国内の社会問題も考えさせられるようになりました。
Q2.事業内容とフェアトレードとの関係性は何ですか。
中野様:企業ごとの経営課題を持続できるようにアドバイスをする相談窓口です。道新さんからのお声がけがあって、札幌学院大学フェアトレードサークルの皆さんが実際にフェアトレードを普及させていく中で、経営を支援している立場として商品開発のアドバイスできることがあればと思い参画しました。
Q3.私たちのプロジェクトに賛同いただいた理由をお聞かせください。
中野様:このプロジェクトは、個人の問題でなく地球全体の課題解決といった取り組みでもあるので、どれだけ世の中に関心を持っていけるか、今後も様々な課題を意識してやっていくひとつのきっかけになると思います。これらに賛同して、応援していきたいなと思いました。
「たくさんの人を巻き込みながら社会全体としてこのことを捉えていくようになる大きなきっかけに。」
Q4.「さっぽろ ゆめ結晶」に期待していることがあれば、お答えください。
中野様:今後に繋げていけるきっかけになると思います。その中で、想定外の新型コロナウイルスで思い通りにならない状況で商品化したのはすごいなと思います。サークルの皆さんが中心となって継続していく中で、たくさんの人を巻き込みながら社会全体としてこのことを捉えていくようになる大きなきっかけになればいいなと思っています。
「感謝の気持ちの通じる世の中になれば・・・」
Q5.フェアトレードを通じて、どんな社会やどんな世界になることを望んでいますか。
中野様:最初にあったように、世の中にはいろんな問題が数え切れないほどある中、その一つとして全てのものや実際にそれを作る生産者の方それに関わる労働者の方に消費ということだけでなく、感謝の気持ちの通じる世の中になることです。全体でひとりの影響度はそんなに大きくないかもしれないけれど、一人ひとりがやれることをやっていって全体として見れば大きな動きになるということが大事かなと思っています。グローバルに国際的なことだけではなくて、自分自身の身近な国内のことを含めていろんな課題に関して関心を持って人のことを協力しあえるような、思いやりを持っていくことが望ましいなと思っています。
※以下からは、学生からの質疑応答と意見交流の様子を抜粋してお届けします!
「厳しい状況の中でもいち早く前向きに姿勢を変えてできることを見つけて取り組んでいく切替えができるところが・・・」
学生:このコロナ禍で企業さんからの相談数が増えたと思うのですが、この先伸びていくなという企業さんの要素は以前の状況と変わりましたか。
中野様:この状況下で、個人消費の飲食店や観光業がダイレクトに売上額は99.9%落ちている業種もあります。大事な部分は、企業活動は長く続いていくので30年の中の一つの危機という風に捉えたときにコロナウイルスがたまたま起きてしまったことなのかというと、世の中の外的リスクが起きていると思います。このことを含めて想定をして、経営をしておかなくてはならないと思います。これから何が起こるかわからない理不尽なことも受け入れながら、それでも生き残って前に進んでいくということが経営に求められます。今回のことで、伸びていくかというと細かい業種によっては色々あると思うのですが、厳しい状況の中でもいち早く前向きに姿勢を変えてできることを見つけて取り組んでいく切替えができるというところが伸びていくのかなという気がします。一時的に、コロナウイルスの影響で意図せず売り上げが伸びているケースもあります。それが、本来の企業の強みだと誤解してしまうと流れが変わった時に、あっという間にプラスの状況がマイナスに転じることもあり得るので随時冷静に3年後5年後10年後自分たちの会社にどういう影響を与えて、元に戻らない可能性もあるので何をしていかなくてはならないのかを考えていくことができる人材が揃った会社がもしかしたら今後伸びていく会社かと思います。
「何ができるか動きを止めずに前に進むということが重要」
学生:コロナウイルスによって影響が出てしまった旅行業はどのような対処をしているのか気になります。
中野様:単純にどう頑張ってもお客さんは戻ってこないという深刻な状況であるというのは間違いないです。この状況を受け、“オンラインガイドツアー”を企画して新しいニーズを獲得した企業さんもあります。旅行には行けないけど、その現地のことが知りたいと思っている人がこのツアーに参加して、飛行機に乗らなくても行った気分になれるんだとか、現地に行けるようになったらぜひ行こうという今までなかったことが出来るようになったり、必要ではなかったことに必要性を感じたりすることがあるので、その中でできることを必死に考えています。何ができるか動きを止めずに前に進むということが重要だと思います。人間性が問われると思います。
「生産者のことが伝わるような、フェアトレードのことがよりわかりやすく」
学生:フェアトレードという馴染みのない商品を売る具体的な案というのはあったりしますでしょうか。
山本様:フェアトレードという言葉自体が完全に浸透していないですが、聞いたことある・関心があるという方はいらっしゃると思うので、見た目でこの商品は何なのかイメージに直結するような生産者の方の写真や原材料の仕入れ先としっかりフェアトレードとして取引をしているということが伝わるようなビジュアル面であったり、ブログやFindHでもう少し生産者のことが伝わるような形で発信するなど、フェアトレードのことがよりわかりやすく伝わるようにしていくと良いと思います。
「トレーサビリティの意識」
学生:フェアトレードを説明することにあたって、自分たちが生活している中でフェアトレードと近い言葉・行動などを見つけるのが難しいのですが、専門家の立場から見て何かありますでしょうか。
山本様:言葉で説明することはとても難しいのですが、自分が着ている服や今日食べたものなど1つ自分の身近なものが、どこから来ていて誰が原料を作ってどういう労働環境でその人達が作ってくれたものなのか一つ一つイメージしていくだけでもフェアトレードの推進だと思います。どこかの機会でトレーサビリティの意識を持つことやフェアトレード推進の期間だけ考えるイベントを札幌市で行うということなど活動していく、ということ自体がフェアトレードになると思うので、さっぽろゆめ結晶を買ったことでどれだけ現地の生産者の所得向上に繋がるかというのを可視化させることが重要かと思います。
「地道な長い期間の取り組みも必要」
学生:今までフェアトレードとは何なのか伝えてきた中で、若い世代に響きにくく関心のない人を巻き込む方法について悩んでいるのですが、その点に関してご意見などございますでしょうか。
中野様:フェアトレードに限らず、関心のない人に知ってもらうことはなかなか難しいことです。人間は必要性のあるものに関心が向いていくので、その人にとっての必要性の重要度がないと知ってもらうことは難しいと思います。しかし、そこで難しいからとやめてしまったらなくなってしまうので、地道な長い期間の取り組みも必要であると思います。長い期間と考えると、5年後10年後20年後となんとなく日本はこうなっているだろうなと見えてきて20年後には自分たちが思っているようなことが作れる期間があると思います。今の子供たち・これからの子供たちがこれからの日本を必ず支えていくと考えたときに、教育は国づくりそのものであると思います。そうなると、必要性とは関係なくフェアトレードという取り組みを子供たちが触れるということだけでもその引き出しを持ったまま大人になっていって、どんどん関心が底上げされていくと思います。関心のない人に知ってもらうということも取り組みながらも長い目で見て継続してやっていくそのものが価値なのではないかという気がします。
中野様:今回の商品開発も含めて、フェアトレードということに関わっていく中で、関わる前と後では変化がありましたか。
学生(田中):フェアトレードは全く知らない言葉だったので、それを聞いて身近なことと言えばレジ袋の有料化が大きいです。コンビニの扉にSDGsのゴール目標が貼ってあったりして、それはこういう活動に関わっていなければ全く知らなかったことでしたが、知れたことでこういう風になっているからこれからこういう時代になっていくんだなとわかって、これから色んな資源が有料化になってくるんじゃないかなと思うと、今から準備できることがあるのかなと思います。
学生(古山):もともとフェアトレードに出会ったのが、中学校の英語の授業でその先生が詳しく教えてくれて印象に残っていましたが、自分でもっと知るという行動に移せませんでした。そして、大学に入学してまたフェアトレードに出会うことができてもう一度フェアトレードを考えるきっかけができました。今は、フェアトレードということだけではなくて環境問題などを身近に感じて、フェアトレードに関することであれば生産者さんの想いをちょっと考えてみる時間を作ったり、一つ一つのものを無駄にせず大事にするようになりました。
学生(多田):自分自身もフェアトレードや環境問題に興味がなかったのですが、橋長ゼミに入って初めて知って推進活動などを学んでいく中で、フェアトレードに限らずニュースなど見ていても色んな問題についてかんがえるようになりました。世界だけでなく日本国内で起こっていることなども考えるようになったので、先生がいつも「フェアトレードは世界を見る切り口だ」とおっしゃっていてそういう考え方があるんだということを広めていきたいです。フェアトレードをやってほしいと言うのではなくて、フェアトレードを通じて、世界をみて世界の色々な問題について考えてほしいというのをテーマにして広めていきたいと強く感じています。1番は、フェアトレードを知ってから色んな問題を考えるようになって視野が広がりました。
中野様:皆さん良い経験と考え方もしっかりされてて、素晴らしい取り組みだなといつも聞いていて思います。
山本様:皆さんがおっしゃったことを、ブログやSNSで発信していくと共感を得られると思うのでぜひそのままおっしゃったことをブログに載せていただきたいです。
学生の感想
古山:現在、多くの人々がコロナによる影響を受けている中で、どう対処していくべきか考えさせられました。5年・10年・20年先を見据えた対策をしていくことの重要さやリスクに直面したとしても諦めずにやり抜く力が必要であるということを学びました。さらに、FTに関心のない人にどう興味を持ってもらえるのかなどといった私たちの不安を相談させていただきました。これから、「さっぽろゆめ結晶」を宣伝・販売していく中で私たちなりに伝えたいことをわかりやすくに発信していくことが課題であるのだなと改めて気づかされました。まだまだ、対面では話し合えない状況が続きますが、学生同士で個人個人の想いを共有し、継続してコミュニケーションを取っていきたいと思います。
土井:関心の無い人々に対する活動も行いながら、将来を見据えて長い目でフェアトレードを広めていくことの重要性を改めて感じました。そうして得られた成果が大きなものになるためには、積極的に伝えていくことが大切ですし、今このご時世で直接会うことは難しいですが、対話を通して意見を交換していくことが大切だと思いました。また、世界だけでなく日本国内にも眼を向ける必要があると学びました。世界に目を向けずとも、意外と近くに問題はあって、それらを解決するために私たちにできる事はたくさんあると感じました。これからもよりよい活動をたくさん行い、共有して発信していきたいと思いました。
中野様、山本様 貴重なお時間ありがとうございました!今後ともよろしくお願いいたします。
※時間の経過の関係で現在と異なる内容がある場合がございます。ご了承ください。
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