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執筆者の写真フェアトレードサークル 札幌学院大学

「さっぽろ ゆめ結晶」プロジェクトメンバー取材企画 第4弾


2020年8月19日

(※時間の経過の関係で現在と異なる内容がある場合がございます。)


第4回目にお話を伺ったのは、パタゴニアの近藤達也様です。

前回に引き続き、事前に用意した質問にお答えいただきました。

その後質疑応答や意見交流を行いました。ぜひご覧ください。



Q1.世の中で問題だと感じていることを教えてください。


近藤さん:一番関心があって、自分の仕事として解決したいものは、(フェアトレードとは少し違う所にはいきますが)気候変動を中心とした環境問題です。世の中で大きな問題がいくつかあると思いますが、そのうちのひとつがこれだと思っています。



Q2.パタゴニアの事業内容とフェアトレード関係性は何でしょうか。


近藤さん:パタゴニア全体としては、フェアトレード認証のアパレル製品の企画、生産、販売をしており、パタゴニア日本支社では、その中でも販売のみを行っています。

また、基本的にはアパレル製品の販売がメインですが、アパレル製品だけでなく、食品のフェアトレード認証にも現在取り組んでいます。



Q3.Q2の質問に関連して、事業でフェアトレード推進活動を行う上での課題や問題点はありますか。


近藤さん:日本においてのフェアトレード製品の市場がまだ小さく認知度が低いというところ。フェアトレードという言葉は知っていても詳しい内容や価値までは知らない方が多いので、フェアトレードに大きい投資をして何か打ち出そうということが難しい。つまり、打ち出しても売り上げが簡単に上がるものではない。パタゴニアとしては推進したく、大きく打ち出したりはもちろんしますが、ビジネス上での効果がすぐには見えづらいというところが日本ではあるかなと思います。

パンデミックの状況が起こって分かったのですが、アパレル業界というのは、サプライチェーンといって世界中に工場で製品を作っており、(例えばバングラデシュ、中国、ベトナム。それから、素材で言えばコットンなどのインド)では、パンデミックによってサプライチェーンが非常に厳しいダメージを受けています。特にフェアトレードを推進したいという国の、経済というものが非常に大きなダメージを受けているので、立て直しが、今後何年かかるのかが見えません。そういった点で、今後アパレル業界は全体的に資材不足で立て直しに時間がかかるのかなと思っています。今回パンデミックで一番影響がある業界はどういったものなのかというと、やっぱりアパレルが入ってきます。それは同時に、フェアトレードを推進する上での難しさというところになってくると思います。



Q4.賛同した理由を教えてください。


近藤さん:大きく2つあります。今僕が1番で述べた気候変動を解決するために、消費のあり方を変えないといけない。

環境問題を引き起こしている一つの要因が、消費のあり方です。お金の回り方もそうです。そういったところに、メスを入れていかなくちゃいけないと思っています。利他的なアイデアから生まれたビジネスが実現するのであれば、世の中はおのずと良い方向に進むと考えています。フェアトレードという考え方は、まさにそのアイデアの1つです。そういった意味で、個人的に投資しても、会社として投資しても、5年後10年後を見る限り、利益、行う価値はあるのかなと思います。

もう一つ、ただ、なんでもフェアトレードで投資するかというと、そういうわけではなくて、やはり若い方が関わって活動しているというのが、非常に大きいと思います。最近、僕らの会社も、学生の方とコワーキングすることが増えてきているのですが、日本の若い方々において環境、社会に関心を持っている方や選挙での投票率は低いと感じています。そのような現状の中活動していて光っている学生は、僕らに持っていないアイデアとエネルギーを持っているので、僕らにとっても学ぶことが多いですし、日本にとっても今後必要になってくると思っています。なので、フェアトレードだったら何でもいいというわけではなくて、フェアトレードを学生や若い方が、何とかしようと思っているという所に、投資をするというのが、すごくポイントになっていると思います。

結果として フェアトレードが人気になることも大事ですが、ぜひ、学生の方がこれを企画してやっているというところを大事にしていただくのがいいのかなと思います。それが、製品の、最後の価値になるのかなと思っています。健康にいいとか、フェアトレードとかのみでない、価値としてそこを忘れないでいてもらいたい。そこの価値で提供することによって製品が成功したということの実績があれば、必ずほかの企業や自治体が注目するはずです。おいしいとか健康にいいという所を土台に持ちつつ、さらに言えばどういった取り組みをしたかというプロセスの価値というものを、ほかの企業や自治体に見せびらかしてもらいたい。そこが、期待値としてはあります。


学生:期待していただいているのを感じて、頑張らなければと思いました。


近藤さん:頑張ってもらいたいと同時に肩の力を抜いてもらってもいいのかなと思います。環境問題や社会問題の取り組みは、なかなか成功しないものです。なかなか自分たちの想い通りにいかないっていうのがミソで、ここまでやったからいけるだろうといっても、実際、成功するかどうかの可能性は低いものです。でも、僕らはそういった状況だったとしても、そういったリスクがあっても、向かい風があっても、がむしゃらに、まずは行動することを楽しんで、前に進むということがすごく大事です。特に学生の方は、今回の活動に関しては、企業と違って自由度もあると思いますし、失敗してもやり直しもいくらでも効くと思います。なんでも思い切って、悩みながらでも行動に移してください。逆にそうしない限り前には進みません。失敗しそうなことに恐れながらやっていると、こういう活動というのはどこかでストップしてしまうので、楽しみながら前に進んでもらえればと思います。


学生:一番大事なところをお聞きできました。自分たち自身、ネガティブになっている部分も多々あって、先生に鼓舞されながらやってきたので。


近藤さん:これが働くようになると出会うプロジェクトというものになります。新しい製品の開発や、販路を作るプロジェクトなどでは、常に見えないものと1週間ごとにぶつかりながら、なんとか飛び越えていくというようなことが連続していくんです。それを今経験していることになると思うし、しかもそれが、どちらかというとただ利益ではなくて、環境問題や社会問題のような難しい案件を取り組んでくれている。なので、皆さんにアドバイスできることがあるとすれば、見えないことがあったり、不安になったりすることは当たり前。当たり前だけども、実は、前に進むと、偶然の出会いから、それが解決されることがあるから、それを繰り返していくしかない。運に任せるではないですが、偶然が味方してくれる時もあるし、逆に言うと偶然が味方してくれるのがこういう活動の成功のヒントなんです。全然知らない、思いもよらないところから助けが出たりします。だから、そういうものだと思って進んでみるといいと思います。絶対計画通りいきません。


学生:そういった交渉事を行うことに意識されていることはありますか。


近藤さん:相手の身になれるかというのが一番だと思います。交渉とか、どういうテクニックで人を動かそうかというのは、実はネットで調べればいくらでも出てきます。これはそんなに難しくない。本当に必要になってくるのは、相手がどういう目でこっちを見ているのか、相手の耳がどういう風に自分の言葉をとらえているのかを、すごく意識することが大事。相手の立場にどれだけ立てるか。そういった意識になって、やれることは大事です。表面的な部分だけを見るのではなくて、相手はどういう風に思うのだろう、相手にとっての価値とは何だろう、相手にとっての利益とはなんだろう、それをしっかり考えたうえで、発言をすれば、成功の可能性自体は高くなるはずです。逆にいろんなスキルを得て、交渉スキルや値段の出し方のスキル、価格の提示の仕方のスキルとか、そういったものはスキルとして持っているにこしたことはないのですが相手の立場に立って話すということができない限り、それは短期的、一時的なものに終わる可能性が高くなります。逆に言うと、そこをもってやることができれば、そんなにスキルというものがなくても話をスムーズに進むのではないかと思っています。相手の立場に立つというところ、本当にここに尽きます

ただ、そういったスキルは一朝一夕のものではないので、なかなか評価しにくいです。


先生:松下幸之助のたらいの法則という言葉がありますよね。


近藤さん:こんな言葉がいいですかね。give and takeという言葉は、ここからあんまり役に立たないかもしれないかなと思っています。give and giveです。例えば、自分が誰かに何かをしてあげると思ったら、してあげるという行為をするときに、その人からの見返りをまず考えないこと。自分が誰かに何かをしてあげたとき、その人がまた、誰かに何かをしてあげます。そして、ぐるっと世界一周してきて、ようやく自分に帰ってくる。そのぐらいの気持ちで話したほうがいいです。その人から何か恩恵を受けようと思って話すと、相手にはわかります。その人の感覚が結構伝わってしまうので、それは持たないほうがいいと思います。そもそも、クラウドファンディングもそういうことです。もちろんバック、リターンが欲しいという、投資した見返りが欲しいという目的でやる方もゼロではないかもしれないですが、クラウドファンディングの基本は、その投資が世界をよくするとか、その投資が巡り巡って10年後くらいに、自分のためになっているということに価値を感じます。スタートとしてはgive and giveという考え方が、今後は特に注目されてくると思うし、今回のプロジェクトでも必要になってくるのかなと思います


先生:近藤さんの話は心にしみますね。


近藤さん:何回も失敗はしていますが。


学生:クラウドファンディングでは、僕らは支援を受けている側なので、きちんとその期待に応えていきたいと思っています。より一層、社会に貢献していかなきゃいけないと感じました。社会に貢献しなきゃいけないと感じました


学生:自分はもらいっぱなしです。


近藤さん:みんなが幸せを感じるタイミングとか瞬間はいろんなパターンがあると思いますが、その中でも純粋に人に喜んでもらったときは、意外とこういう風に、人のためになったときと嬉しいと思います。これやって、自分は大変だったけど、この人は自分のためにこんなに喜んでくれている、自分のやったことに対してすごく喜んでくれているというのは、与えた立場だけれども、感覚として自分が幸せになるということがあると思います。実は自分はもらってきた立場だけどもらった分だけ誰かは幸せになっているんです。だったらそのまねをして次は、ただ見返りを求めずに、人にあげたりとか、自分の得意なことで人を幸せにしてあげたり、そんな風にして、積み重ねていくと、だんだん、俗にいうクラウドファンディングとか、give and giveとか、すごく実感として、どうしたらそういうとこにたどり着けるのかというのがわかると思います。ちょっと哲学的ですが。与えることは意外と自分の幸せにつながります。意外と即効性もありますし。

いろんな活動をしていく中で、チームで自分にしかできないことだったりとか、チームじゃなくても学校の中で自分にしかできないこと、自分がやっていてワクワクすることだったり、自分の特性を活かして人の役に立てることってあると思います。それができたとき、すごく嬉しいですよね。「社会貢献に興味がある」+「人のためになりたい」というのであれば、やっぱりフェアトレードの活動で実績が見えたときに、本人にとっても、大切な経験になっていくはず。僕はアウトドアしか特技がないけれど、アウトドアで人を喜ばせる事のできる、自分にしかできない事も色々あるんです。そこで自分の希少性というのを発揮できるんです。そういったときは特に自分が嬉しくなりますよね。これが俺の存在なんだ!というように。


学生:アウトドアだとか山登りは昔からお好きなんですか。


近藤さん:山が好きというよりかは、好きということ以上に口では言えない価値があります。どちらかというと山が好きというより、冒険とかチャレンジすることが好きなので、その一つが山であるっていう表現がいいのかもしれないです。だから好きか嫌いかで言ったら、冒険すること、見えないことに飛び込んでチャレンジすることが好きという感じですかね。


学生:飛び込むのは怖くてチャレンジするのが苦手なのですが、そのときの心構えはありますか。


近藤さん:何か行動を起こすと、自分の内側も外側も必ず変化が起こる。そして変化が起こると必ず成長できます。その成長を楽しみにする。自分の中で何が起こるのだろうとワクワクする。逆に言うと、頭の中だけで完結されていて行動すると、それが起こらないんです。だから、必ず行動して、そして外にも中にも変化が起こったときに、そのあと自分がどうなってしまうのだろうという変化を楽しむのが一つですね。

もう一つ、これを言うと元も子もないですが、決断が苦手という話がありましたが、苦手な項目は誰にでもあります。だから無理に克服しなくてもいいというか。十人いれば、十人十色で決断とか判断ができない人も多くいます。そういう場合は、どうしてもできない、苦手という人に何かを任せるのではなくて、決断とか判断ができる人とコミュニケーションをとって決断とか判断をサポートしてもらう。要は、みんな凸凹が前提ということです。できるところ、できないところをチームメンバーが集まったときに丸くなればいいのです。計算が得意な人、予測するのが得意な人、突破力がある人、決断力がある人、あとは冷静な人、どれもその人の特徴であって、チームで活かしあえばよいのです。見方を変えれば決断が苦手な人は、思慮深い。よく考えて よく検証する、しっかり計画して見えてから物事をやりたい、これもその人自身の強みです。この強みで仲間とチームに貢献すればいいのです。決断する力を無理やり伸ばそうとすると、もとからある思慮深さなどをおのずと削ることになります。だから自分は決断が苦手ということを認識しつつも、そこで自分を否定してはいけません。決断が苦手だったら、それでいいんです。チームでだれか得意な人がいますから。

【学生の感想】

今回はパタゴニアの近藤さんにお話を伺いました。フェアトレードの事業のことだけでなく人生の先輩としてのアドバイスなど人間的なところでもためになるお話を聞けました。

やはりフェアトレードを広く世に伝えるために活動していても売り上げが見込みづらいことであったり、現在パンデミックの影響から、サプライチェーンとなっている国の行政が安定していないためフェアトレードが一歩先の段階に置かれてしまうということが現状の問題点だと考えます。立て直しがいつまでかかるか把握できないというのが悩ましい点です。加えて、アパレル業界での被害が大きいというのは個人的に意外でした。パンデミックの影響はそこかしこに出ているのだと実感しました。近藤さんがおっしゃられていたとおり、環境問題や社会問題などに属する事柄は自分たちの思い通りに物事が運びづらいというのを我々も痛感しています。なかなか思い通りにいかず霧がかかった道を進むような気持ちで不安になることもありますが、進んでいけば偶然うまくいくということがある。何でもできることは挑戦してみる。ということの大切さを今回のお話で学べました。現に次に我々にできることは何があるだろうかという点で行き詰っているのでとりあえずは実行してみる。偶然うまくいくかもしれないという気持ちをもって活動していきたいと存じます。



 近藤様、貴重なお時間ありがとうございました!また機会がありましたら、その際はどうぞよろしくお願いします。




※時間の経過の関係で現在と異なる内容がある場合がございます。

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