2020年8月19日
(※時間の経過の関係で現在と異なる内容がある場合がございます。)
第3回目にお話を伺ったのは、北海道新聞社営業局の惣田浩様です。
前回に引き続き、事前に用意した6つの質問にお答えいただきました。
その後質疑応答や意見交流を行いました。ぜひご覧ください。
惣田様:営業局というのは、基本的には新聞の広告を売るというのが主な仕事になっているが、最近は領域が増えてきて、新聞広告以外でもあらゆるものを営業して歩くというようなセクションです。今は、札幌市さんや道庁さんとSDGsの普及とSDGsを実際に行動に移していくためにはどうしたらいいかということを一緒に考え、北海道が基幹産業として仕事を持っている食と観光について、どんな風に道外や海外にアプローチしたらよいかということなんかを含め、諸々をやっています。今回、ゆめ結晶でお世話になっているクラウドファンディングというのを我々のセクションでやっていて、クラウドファンディングが立ち上がってから1年ちょっと経過をしたところですが、大体クラウドファンディングでは当初の予定通り、プロジェクト数は50件くらい成立している。北海道新聞の中でも率直に言うと雑用的な仕事をしているというようなセクションになります。
「新型コロナウイルスで大変だと終わらせない。大きく変化していかなくてはならない。」
Q1.世の中で問題だと感じていることをお聞かせください。
惣田様:コロナウイルスの影響。我々の会社も2月からの売り上げは3割から4割落ちています。7月くらいからだんだん持ち直しているものの、それでも20%から25%くらいは売り上げが減少した形で推移をしている。北海道新聞は会社ができてから78年になるが、赤字で決算したことは今までになかったのですが、来年の3月は創業以来初の赤字決算になるのではないかという風にも言われていて、我々の給料も当然ながら下げられているというような状況です。我々の会社だけではなく、特に飲食やサービス業、観光業にかかわってらっしゃる方は、もっとひどい状況になっていますし、北海道で影響を受けていない営業種は本当に数少なくて、多くの企業の皆さんは大変な思いをしていると思います。コロナの影響で、三か月か半年くらいで当初は収まると思われていたが、これから2年や3年、もしくは5年から10年も影響が続いていくと思われます。一過性のものであれば、耐えしのぐということになりますが、一過性のものでないとすれば、仕事の仕方が変わり、今のようにオンラインで打ち合わせや会議を行うこと増えました。セミナーや講演会を行うというような人が集まることが多かったわけですが、今はできなくなって、それは中止にするのではなく、どうやったら開催できるのかというところで、多感にウェビナーというものが行われています。このようにコロナとうまく付き合っていく、そのために仕事の仕方も変える、社会の在り方、人間関係も含めて、いろんなものが変わっていくのだろうと思っている。その大きな一つがデジタルシフトと言われています。新聞社は電子版にかなり力を入れていましたが、デジタルシフトのところではかなり遅れているところもありましたので、大きな流れとしては、デジタルシフトにどう対応していくのかを考えなければいけないということも含めて、コロナで大変な思いをしているというだけでなく、それによって大きく変えていかなければいけない、そんな世の中のスピードに対応していかなければいけないという点では大変なことが起きてしまったという実感です。
Q2.事業内容とフェアトレードの関係性についてお聞かせください。
惣田様:フェアトレードと直接ということではありませんが、北海道新聞としては、去年の3月くらいから会社としてかなりSDGsに力を入れて報道もするようになり、我々営業セクションもSDGsというものが北海道の企業さんにとっても北海道にとっても大きな意味のあるテーマだと位置づけて、積極的に多くの方に知ってもらい、共感してもらうということを始めようと思って、1年半ほど活動している。SDGsを実際に認知してもらう、行動に移していくということの一つにフェアトレードという考え方が非常にフィットすると思っています。SDGsの1番や2番に貧困をなくす、飢餓をなくすということがあるが、今北海道にいて、貧困や飢餓をなくそうといっても全然ピンとこないわけですが、フェアトレードという考え方がそこに入ると、具体的に自分の行動が世界の貧困をなくすことにつながるということが実感できます。SDGsを実現するための一つのきっかけとしてフェアトレードを実際の生活の中で意識して、フェアトレード商品を購入するだけでもかなり意識や行動が変わってくると考えています。SDGsを普及させて、これを北海道の大きな柱にしていきたいと思っているので、具体的な行動としてフェアトレードは素晴らしい取り組みだと考えています。
「『フェアトレード商品って高いよね』という先入観や思い込みがまだまだある。」
Q3.Q2の質問に関連して、事業でフェアトレードを推進していく上での課題や問題点はありますか。
惣田様:フェアトレードについていろんな方に話を聞き、クラウドファンディングなどもありいろんな方に話を聞きましたが、どうしても意識の高い特定の人がやっているもので、自分たちごととは思っていないのではないかという実感です。また、「フェアトレード商品って高いよね」という先入観に近い思い込みが一般の人にはまだあるのではと思っています。単純にただ高い商品を買える人がやる運動のようなイメージを持っている人が多いので、そういったイメージを払拭する、日常の中にもっとフェアトレードが入ってくるような動機付けができたらいいなと思っています。
「フェアトレードが普及していくこと=SDGsの具体的な行動として行われる。」
Q4.我々のプロジェクトに賛同いただいた理由をお聞かせください。
惣田様:フェアトレードが普及していくこと=SDGsが北海道に根付き、SDGsが具体的な行動として行われるようになるのではないかと考えたからです。フェアトレードにしてもSDGsにしても観念として理解してもしょうがないもので、日常的な普段の行動の中にどうやって入れていくかが大事になるので、フェアトレード商品を日常的に購入することが当たり前の状況になっていくのが望ましいと考えています。
Q5.「さっぽろゆめ結晶」に期待することがあれば、お聞かせください。
惣田様:代替わりすることで継続しないのではないかという心配があります。せっかくなので、この商品が北海道の人に長く愛される商品になっていって、5年後、10年後も店頭に並んでいる商品であってほしいと思っています。先輩から後輩に受け継いでいくことは大変なことかもしれないですが、10年後もお店で売っているのを見たいなという風に思っています。
「貧困や格差がない国にも巡り巡って自国にも影響が出るかもしれない。そんな世界に目を向けるきっかけに。」
Q6.フェアトレードを通じて、どんな社会や世界になることを望んでいますか。
惣田様:想像力として、日本人が困っていることをあまり想像できないが海外で困っていることを自分事として考えることは難しいですが、フェアトレード商品を日常的に買う行為を繰り返すことで、世界的に困っている人や助けが必要な人との距離感が少しずつ近づくのではないかと思っています。世界の貧困や格差などは巡り巡るとテロや紛争になり、日本にもかかわりが出てくることになります。日本にはそこまでひどい貧困も格差もないから、世界のどこかで起きていることは興味を示さないようだが、それも巡り巡って私たちの生活に影響を与えることも含めて、世界に目を向けるきっかけとしてフェアトレードを意識することは大事なことであると思っています。我々もSDGsの活動とともにフェアトレードを北海道の人たちに日常事として捉えていただきたいと感じている。
※以下からは、学生からの質疑応答と意見交流の様子を抜粋してお届けします!
「義務でもなく、毎日意識しなくて良い。楽しい・面白い・おしゃれからの切り口からフェアトレードに触れてほしい。」
学生:フェアトレードが日常的になるための活動として考えているものはありますか。
惣田様:フェアトレードを実践している人が大々的に出れば出るほど「私とは違う」と思う人ではなく「私もこんな活動してみたいな」と思わせるようにしたいと思っています。毎日でなくても月一回のようなものを義務や社会のためとかではなく、楽しいという思いや面白い、おしゃれというような切り口で機会を作れたらいいなと思っています。
フェアトレードなもので器などを作るなど、新しい考えがあってもいいなと思います。
学生:フェアトレードを全面に出すことも大事だと思うのですが、物理的な魅力、例えば、パッケージがかわいい、味がおいしいなど、お客さんにそっち側に食いついてもらって、食べた後にフェアトレード商品であることに気づくなど、フェアトレードを目的に買うのではなく、物理的な魅力で買ってもらうのもありなのではないか。
惣田様:それが理想だと思います。フェアトレードの材料を使うという制約がある中でおいしい味を出すことは大変だと思いますが、これからも改良を重ねるのであればそこを目指してほしいと思います。商品を市場に出すというのは大変なことですが、味やパッケージをどんどん改良していけばいいのかなと思います。企業では内客の時に当然お茶を出すわけですが、それも一緒に出せるようになったらいいですよね。
「SDGs全ての項目を理解するのではなく、自分自身の日常生活でできることを。」
学生:フェアトレードは飢餓や貧困をなくす一つの策だと思うのですが、それ以外にSDGsに関連して関心のある取り組みはありますか。
惣田様:SDGsは17の項目があるのですが、17の項目を言葉として理解するのではなく、日常の生活の中でできることをやっていくことが大事だと思います。今自分も含めて日常的にできることは、脱プラスチックと食品ロスを減らすことです。これが一番身近で誰にでもできることだと思います。個人的なテーマとしては、脱プラスチックと食品ロスを減らすことで、これを北海道の日常的な取り組みになればいいなと思っています。
学生:脱プラスチックの取り組みなどをしている大学生や高校生などの団体はあったりしますか。
惣田様:この間、橋長先生が審査委員長をされたSDGs甲子園という高校生たちがSDGsの具体的な行動プランをプレゼンテーションする催しがあったが、北海道と関東地区で行われ、脱プラスチックの取り組みについて札幌の学生がいました。私が今考えているのは、日本環境設計という会社さんがあるのですが、世界で唯一、モノをナノ電子まで分解して何度でも再生して同じものを作り直せるという技術を持っている。ペットボトルにも同じ技術で何度もペットボトルからペットボトルを再生できる。この会社は北九州と川崎にあるのですが、室蘭あたりにこのプラントを誘致して、何回でも再生できるペットボトルなどを作れたらいいなあなんて思っています。
学生:SDGsの活動をもっと広い視野でやっていけたらいいなと思います。
惣田様:高校生など、大切なことだからやらないといけないとか、義務としてやるのでは続かないので、どんなことでも楽しんでやらないといけないと思っていると言った高校生がいて、自分たちが一番に楽しむことが大事だと思っています。SDGsの実現のために我慢することや快適な生活を失うのではなく、日本環境設計さんは技術力によって新たな環境に負荷をかけない生活を提供しようとしています。技術力、あるいは楽しむことを目的に活動してほしいと思っています。
学生:マイボトルに関して、学内にウォーターサーバーを設置したいと考えています。
惣田様:学内からそういったものが定着するとどんどん広まっていくと思います。新校舎になったタイミングで学内にペットボトルがないのは面白いですよね。
先生:社内でもそういった脱プラスチックなどのエコな活動はあったりしますか。
惣田様:SDGsがこうやって記事に書かれるようになったにも関わらず、周りの行動に落とし込まれるようにほとんど活動が行われていない。やってもごみの分別くらいで、今のところそんな活動ができていないのはいけないことだと思います。テレビ局なんかも報道する以上は社員一人一人がSDGsの活動をするための行動指針のあるテレビ局もあったりします。
先生:新聞も電子化が進み、改良が進んでいるという印象があります。
惣田様:販売店さんとの関係性で新聞社は成り立っているので、紙の新聞をとっている人が電子版を購読できる仕組みになっています。今は早急に電子版のみで販売に行えるように行動していきたいと思います。ただ、料金の問題があり、どれだけの値段で販売していくのかなどが鍵になってきます。昔のビジネスモデルを簡単には変えられないし、いい時の売り上げから半分以上下がっているのに、変えられないのは問題だと感じています。
今回のクラウドファンディングでこのように大学生と関わりができたのは嬉しいです。
クラウドファンディングについては一気に使う人が増え、今はバブル状態です。人脈の広い人では頼まれることも多いので、大変な思いをしている人もいるかもしれないですね。
先生:私たちのプロジェクトはどう思いますか。後半が均衡状態で最後に学内などに呼びかけをしようと考えているのですが、ほかの方法はありますか。
惣田様:最初と最後の1週間に支援はある程度集中するといわれていますので、つながりのない人にどうやって広めていくかが鍵になってきます。いろんなメディアにリリースを送ってみるのもいいかもしれません。取り上げられない可能性はありますが、記者クラブにリリースを送るよりは直接メディアに送るほうが有効だと思います。
学生:企業の方と話す機会が減っている中でこのような機会ができて光栄です。
惣田様:就活においても慣れておける事はよいことですね。就活がオンラインになることはいいことになる人も悪いことになることもありますが、就活で今まで活動してきたことが堂々と言えるものがあるといいですね。
学生の感想
佐藤:フェアトレードは、SDGsの中でも多くの課題を解決するための方法として、とても良い取り組みであって、多くの人々が参加しやすいということが改めて理解できました。フェアトレードと聞くと価格が高く、手が出しづらいイメージがありますが、学生が発案することによって親しみやすく、そのイメージを払拭するチャンスであることがわかりました。また、自分たちが楽しんでやっていくことで、ポジティブなものになり、認知されやすくなるのではないかと考えることができました。フェアトレード以外の取り組みとして、プラスチックの削減を述べられていて、今後はマイボトルや、エコバックが身近なものとなっていき、水質汚染問題や資源のムダ遣いを少なくして、より良い地球にしていくことが今後の目標であることも興味深く、自分も実践していきたいと思いました。もうひとつ、やらなければならない取り組みとして、食品ロスの改善は自分も大きく共感できました。私自身コンビニで働いたことがあり、廃棄になった食材や飲料をごみ箱に入れる瞬間は罪悪感でたまりませんでした。ちょうどよく、食材や飲料を仕入れることは、不可能なので、廃棄になった後のことを考えて、肥料にしたり、飲料であれば、ろ過装置など作って、飲めるようなことができれば、ただ捨てるよりは、環境に良いのではないかと感じました。コロナ禍で、クラウドファンディングをしてくださった方、私たちの取り組みに賛同していただいた企業の皆さん、少なからずコロナの影響を受けていると思いますが、私たちのゆめ結晶プロジェクトに協力していただいたことに本当に感謝しなければならないと感じました。
古山:惣田様には、クラウドファンディング立ち上げから達成まで長期にわたって大変お世話になった方です。惣田様が近くにいなければ、お菓子開発も生産開始できていなかったかもしれません。そんな恩人のような方にお話をお伺いでき、素敵な時間を過ごさせていただきました。SDGsについて、多くの方から得た情報や実際にビジネスとして行われている目線からリアルなお話をいただけたなと感じております。SDGsの延長線上にあるフェアトレードを通じて、課題の共通点も見つけられたため改善点が明確に見えてきました。消費者の皆様の先入観を払拭するためには、こうしてフェアトレードの周知活動を行う私たちがとにかく楽しく、そして自分たちの立場で身近にできることを発信できる人になりたいなと思いました。
惣田様、貴重なお時間ありがとうございました!今後ともよろしくお願いいたします。
※時間の経過の関係で現在と異なる内容がある場合がございます。
Comments